2015/09/27

地平線会議終了

9月25日の地平線会議にいらして下さった皆様、本当にありがとうございました。
色々準備を進めて下さった地平線会議の関係者の皆様にも、改めてお礼申し上げます。

開始早々、丸山さんが僕のことを紹介して下さっている間に、どんどん緊張感が高まり、一体どうなるんだろうかと思っておりましたが、話しを始めればそれほどの緊張もなく、ほぼ思い通りの話ができたのではないかと、思っております。
ただ、あまりにマニアックな世界なので、よくわからなかったこと、全くわからなかったことなどあると思います。
疑問点、意見など、こちらのブログのコメント欄に書き込むなり(今回はきちんとコメントを付けるようにします)、メールなりFacebookなりで、質問してくださって結構です。

当日の会場、気が付けばほぼ満席に近いような感じで、あまりの人の多さにびっくりしておりました。
会場では、古い友人知人に再会できたり、共通の友人がいる人に会えたり、友人同士がどこかで繋がっていたり、繋いでみたり、改めて人と人の繫がりは面白いなと思うのでした。

クジラ袋はほぼ完売。手拭、DVDも多くの方々に買っていただきました。有り難いことです。
また、かなり高価なウルも買って下さる方がおり、感謝しております。

今後、こういった人前で話す機会があれば、またブログ等でお知らせしますので、皆様、ぜひおいで下さいませ。

当日もちょっとお話しした通り、クジラ猟のみならず、アゴヒゲアザラシ猟、カリブー猟、ウミガラスの卵採りなどもやっておりますし、それらの処理方法も多少は覚えておりますので、ネタはそれなりにございます。
人が集められそうなので、その人たちの前で何か変わった話をして欲しいという、ご要望もお待ちしております。時間の都合さえ付けば、どこへでも参上いたします。
ただし、僕の話に人生訓めいたこと、教訓のようなものを期待しないでください。このブログを読んでいただけばわかる通り、バカ話が非常に多いですし、当の本人も結構なバカなのです。

追伸
クジラ袋は増産すべく、資材を購入して参りましたので、やっぱり欲しいという方はご連絡ください。手拭はまだまだ余っております。
ウルもぼちぼち作っておりますので、そろそろ予約を開始したいと思います。
いずれの商品も、手作り故、むらがあったり、大きさが異なったりしておりますので、そのあたり、ご容赦ください。

2015/09/15

腸の処理方法

かつて、エスキモーが全ての素材を自然から得ていた頃は、雨具も天然素材を用いて作っていた。
丁寧に皮を剥ぐ
雨具の主な材料はアゴヒゲアザラシの腸。
例えばこんな感じのものができ上がる。
雨具
これはカナダのイヌイットのものだが、基本は同じようなもの。
また、チュイリックと呼ばれる、カヤックに乗る際の防水着も作られている。

さて、この腸の処理方法、意外とどこにも出ていないので、メモ代わりにここに記しておこうと思う。
胸骨を切りはずし内臓を露出させる

 アゴヒゲアザラシが捕れると、女性たちが集まって解体が始まる。
皮はウミァックに使うので、穴をあけないように、丁寧に剥がしていく。

皮を剥ぎ終わると、正中線上に切れ目を入れ、胸骨の関節部分を切り取り、内臓を完全に露出させる。

気管、食道を喉の辺りで切り取り、ニクスィック(小型のフック)で気管か食道を引っ掛けて下半身の方へ引く。腹膜を切り取ると、ずるずると内臓は体外へと引き出されて行く。

引きずれ出された内臓(2頭分)
 内臓のうち、腸、腎臓の一部は食用にするが、全てを食べることはほとんどないため、海に戻してしまう。
かつて、犬ぞりを使っていた頃であれば、余った内臓は犬のエサにしたのではないだろうか。

ところで、ポイントホープには、毎年のようにフェアバンクスから海獣の研究者がやってきて、内臓、皮下脂肪などのサンプルを採取していく。
何故か女性研究者しか来ないため、いつしか彼女たちは「ウグルックレディ」と呼ば
れるようになってしまった。アゴヒゲアザラシ女。。。
取り出された内臓からサンプルを集める。
彼女は海獣の研究者。

彼女たちの報告によると、ポイントホープ周辺のアゴヒゲアザラシは重金属の含有量は低く健康的だそうである。

彼女たちは必ず解体を手伝い、その上でサンプルを採取していく。
以前、(彼女たちかどうかわからないが)手伝いもせずサンプルだけ採取しようとして相当怒られた人たちがいたらしい。

さて、今回使う部分は小腸。非常に長いので、適当な長さをナイフで切り取る。
寄生虫(サナダムシ?)
腸の中には100%の確率で寄生虫(条虫の仲間、サナダムシなど)が入っているので、内容物共々綺麗にする。

海岸に転がっている適当な大きさの小石を腸の中に入れて、小石とともに腸の中身をしごき出す。数回繰り返すと、腸の中は綺麗になる。
腸の中の寄生虫はまだ生きていて、うねうねと動いていることも多い。
ちなみに血液中にはアニサキスという寄生虫がたくさんいる。

腸の外側をスプーンでしごき、表皮を剥がしていく
海岸で一通りの処理が終わった腸は、家に持ち帰り水でよく洗う。
すぐに処理できない場合は水に浸けたまま、物置などの涼しい場所に置いておけば、数日間は保存も可能。

水に浸けておいた腸の端を探し出し、段ボールの上で、スプーンを使って端から表面の組織をこそげ落としていく。
腸はかなり強いので、それなりに力を入れてこそいでも、破れることはほとんどない。
処理の終わった腸
丁寧に作業をすれば、内側の組織も一緒に落ちていくが、万全を期して、表面が終わったら、裏返して内側の組織もこそげ落としすことにしている。

完全に組織がとれると、薄い膜だけが残る。
何度か水洗いをしてから、一方の端を紐で結ぶなどして閉じ、もう一方の端から空気を入れていく。
空気を入れて膨らませて乾燥させる
腸に直接口を付けて息を吹き込むと、非常に臭く、口についた匂いが取れなくなりそなので、空気入れを使うことが多い。

空気を入れて膨らませた腸は、日なたであれば1日も干しておくと完全に乾燥し、油紙のような色のものが出来上がる。

これを適当に切り開き、縫い合わせれば、防水ジャケットになる。
ただし、縫い合わせる前に油(現在であればローションなど)をよく塗り込んで揉みほぐしておかないと、針を刺したところから破れてしまう。
また、水濡らしてから針と糸で縫い合わせても、比較的破れにくい。

ウミアックの模型に出来上がった腸を張ったもの
防水ジャケット以外の使い道として個人的に好きなのは、ウミアックの模型に張ること。
本物のウミァックであればアゴヒゲアザラシの皮を張るが、模型の場合、ワモンアザラシの皮を張る人が多い。
しかし、うっすらと骨組みの透けて見える腸を張るのが自分の好み。
ちなみにこの模型、海岸で拾ってきた流木を素材に、接着剤を一切使わず、糸だけで組上げたもの。
昔のウミァックは釘もボルトも使わずに作られていたはずなので、きっとこんな感じだろう、と作ったもの。

2015/09/01

地平線会議で話をします

来る9月25日(金)、地平線会議でお話しさせていただくこととなりました。

地平線会議とは、1979年に発足した、探検・冒険から登山、旅、さらには民族調査やボランティア活動まで、世界を舞台に活動を続けている行動者たちのネットワーク。
詳しくは以下をご覧ください。
地平線会議ウェブサイト
9月25日の案内
 わたくし、イラストでウグルックになってウミアックに乗っておりますよ。

1990年代には、よく色々な方の話を聞きにいっていたのですが、近年はとんとご無沙汰で、記憶にあるのは、犬ぞりで北極圏を走り回っている山崎哲秀さんのときだけ。

ひょんなことから、Facebookで地平線会議の丸山さんと友だちになり(こちらは丸山さんの面識があったものの、丸山さんはこちらの記憶なし)、こんなわけのわからないことをやっているのなら、ぜひ地平線会議で話をして欲しい、ということで、9月の地平線会議で話をすることに。
今まで、話を聞く立場だったのに、いつの間にか話をする立場になるとは。

クジラ猟のことを中心に話をする予定ですので、聞いたことのある方は、同じような話になってしまうかと思いますが、休憩をはさんで2時間半も時間があるので、今までよりもずっと濃い話ができると思います。

日時 2015年9月25日(金) 18:30〜21:00
会費 500円
会場 新宿スポーツセンター(新宿区大久保3-5-1)

予約の必要はないそうですので、時間がある方はぜひ、おいで下さい。

2次会は餃子のおいしい店だそうですよ。